労働相談

 

労働相談Q&A

13.36協定と特別条項付き協定
Q
月25時間で36協定を結んでいるが、会社から50時間の協定を提案された。
A
月の限度は原則45時間。特別条項付き協定を結ぶ必要があり、詳細な検討が必要。
法律のポイント
時間外労働の限度時間(月45時間・年360時間)に法的強制力はなかったが、 2019年4月より罰則付きの上限が設けられた。ただし、この上限は「これ以上働かせてはならない」というもので、あくまでも時間外労働・休日労働は必要最低限にとどめられるべきものである。臨時的な特別な事情により特別条項付き協定を結ぶ場合でも、できる限り限度時間に近づけるよう努める必要がある。
解説
36協定

 使用者が法定労働時間を超えて、時間外労働や休日労働をさせる場合は、「36協定」を労使で締結し、労基署に届けることが必要である(労基法第36条)。
 36協定での延長時間の基準である「限度時間」は、法改正により2019年4月以降は、 原則「月45時間・年360時間」の時間外労働の上限規制が罰則付きで導入された。

<改正後:2019年4月以降>

時間外労働の上限規制

 時間外労働の上限規制は、法定労働時間を超える時間に適用される。「限度時間」は、月45時間かつ年360時間(1年単位の変形労働時間制は、月42時間かつ年320時間)。
 限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない臨時的で特別な事情がある場 合、特別条項付き協定を結ぶ必要がある。ただし、その場合においても以下の上限がある(労基法第36条)。

  1. ① 年間の時間外労働は720時間以内
  2. ② 休日労働を含み、単月で100時間未満
  3. ③ 休日労働を含み、2カ月ないし6カ月平均で80時間以内
  4. ④ 原則である月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合には42時間)の時間外労働を上回る月数は年6カ月まで

※休日労働は法定の休日労働を指し、1週間に1日の休日(変形休日制を採用する場合は4週4日)を意味する(労基法第35条)。

<建設業・ドライバー・医師の時間外労働の上限規制(2024年4月〜)>
工作物の建設の事業 災害時における復旧及び復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます。
災害時における復旧及び復興の事業には、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内とする規制は適用されません。
自動車運転の業務 特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。
時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内とする規制が適用されません。
時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月までとする規制は適用されません。
医業に従事する医師
特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外・休日労働の上限が最大1860時間(※)となります。
時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内とする規制が適用されません。
時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月までとする規制は適用されません。
医療法等に追加的健康確保措置に関する定めがあります。
※特別条項付き36協定を締結する場合、特別延長時間の上限(36協定上定めることができる時間の上限)については、
A水準、連携B水準では、年960時間(休日労働含む)
B水準、C水準では、年1,860時間(休日労働含む)となります。
なお、医業に従事する医師については、特別延長時間の範囲内であっても、個人に対する時間外・休日労働時間の上限として副業・兼業先の労働時間も通算して、時間外・休日労働を、
A水準では、年960時間/月100時間未満(例外的につき100時間未満の上限が適用されない場合がある)
B・連携B水準・C水準では、年1,860時間/月100時間未満(例外的に月100時間未満の上限が適用されない場合がある)とする必要があります。
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業 上限規制がすべて適用されます。

<臨時的な特別な事情>
 臨時的な特別な事情とは、「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」(労基法第36条第5項)である。

[例]
=臨時的な特別な事情と認められないもの=
〇(特に事由を限定せず)業務の都合上必要な時
〇(特に事由を限定せず)業務上やむを得ない時
〇(特に事由を限定せず)業務繁忙な時
〇使用者が必要と認める時
〇年間を通じて適用されることが明らかな事由

=臨時的な特別な事情と認められるもの=
〇予期せぬ納期変更などによる納期のひっ迫
〇予期せぬ大規模なクレームへの対応
〇予期せぬ重大な機械のトラブルへの対応

労働時間の客観的な把握

 事業者は、医師の面接指導を実施するため、高度プロフェッショナル制度の対象者(健康管理時間が適用)を除く、すべての労働者(管理監督者や裁量労働制など、みなし労働時間制の労働者も含む)の労働時間の状況を省令で定める方法により把握しなければならない(安衛法第66条の8の3)。
 省令で定める方法は、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」(安衛則第52条の7の3第1項)とされ、通達で以下の内容が示されている。

【原則】

 労働時間の状況の把握とは、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものである。
 事業者が労働時間の状況を把握する方法としては、原則として、タイムカード、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者(事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければならない。
 なお、労働時間の状況の把握は、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第54条第1項第5号に掲げる賃金台帳に記入した労働時間数をもって、それに代えることができる(管理監督者等、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者、裁量労働制の適用者はこの限りでない)ものである。

【例外】

 「その他の適切な方法」としては、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合(例えば労働者が事業場外で行う業務に直行・直帰する場合など。ただし社内システムへのアクセスなどで客観的に把握できる場合を除く)において、労働者の自己申告による把握が考えられるが、その場合には、事業者は、以下の①から⑤までの措置を全て講じる必要がある。

  1. ①自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の状況の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
  2. ②実際に労働時間の状況を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
  3. ③自己申告により把握した労働時間の状況が実際の労働時間の状況と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の状況の補正をすること。
  4. ④自己申告した労働時間の状況を超えて事業場内にいる時間又は事業場外において労務を提供し得る状態であった時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
    その際に、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間の状況ではないと報告されていても、実際には、事業者の指示により業務に従事しているなど、事業者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間の状況として扱わなければならないこと。
  5. ⑤自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、事業者は、労働者が自己申告できる労働時間の状況に上限を設け、上限を超える申告を認めないなど、労働者による労働時間の状況の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。
    また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の状況の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該阻害要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
    さらに、新労基法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間の状況を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

 なお、事業者は把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない(安衛則第52条の7の3第2項)。
 また、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)では、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるとし、手待ち時間等の具体例を示されている。

医師の面接指導

 医師による面接指導の対象となる労働者は、時間外・休日労働が月80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者(申出による)が対象となる。また、医師の面接指導の確実な実施に向け、事業者は1カ月当たり80時間を超えた労働者に対して、速やかに超えた時間に関する情報を通知することが必要(安衛則)。
 新技術、新商品等の研究開発の業務に関しては、時間外労働の上限規制が適用除外とされることを踏まえ、当該業務に従事する労働者の健康確保措置として、月100時間を超えた者に対して、医師の面接指導が義務づけられる。また、事業者は当該労働者に対して、速やかに超えた時間に関する情報を通知することが必要(安衛法第66条の8の2、安衛則)。

36協定の必要協定事項
  1. ① 改正労基法第36条の規定により労働時間を延長し、または休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
  2. ② 対象期間
  3. ③ 労働時間を延長し、または休日労働をさせることができる場合
  4. ④ 対象期間における1日、1カ月および1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間または労働させることができる休日の日数
  5. ⑤ 労働時間の延長および休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
  • 時間外・休日労働協定の有効期間
  • 時間外・休日労働協定の1年の起算日
  • 改正労基法第36条第6項第2号・第3号に定める要件を満たすこと(協定締結時だけでなく、実際の時間外・休日労働を合算した時間数は、単月100時間未満でなければならず、かつ複数月を平均して80時間を超過しないこと)
  • 限度時間を超えて労働させることができる場合
  • 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康福祉確保措置
  • 限度時間を超えた労働に係る割増賃金率
  • 限度時間を超えて労働させる場合における手続き
36協定締結時の留意事項
  1. ① 時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめる(指針第2条)。
  2. ② 使用者は、36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務を負う。労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まることに留意(指針第3条)。
  3. ③ 時間外労働・休日労働を行う業務の区分を細分化し、業務の範囲を明確する(指針第4条)。
  4. ④ 「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」でなければ限度時間(月45時間・年360時間)を超えられない。限度時間を超える必要がある場合は、できる限り具体的に定め、限度時間にできる限り近づける(指針第5条)。
    ※特別条項で延長する場合、月末2週間と翌月初2週間の4週間に160時間の時間外労働を行わせるといったような、短期に集中して過重な労働となることは望ましくないことに留意。
  5. ⑤ 1カ月未満の期間で労働する労働者の時間外労働は、目安時間(1週間15時間、2週間27時間、4週間43時間)を超えないよう努める(指針第6条)。
  6. ⑥ 休日労働の日数・時間数をできる限り少なくするよう努める(指針第7条)。
  7. ⑦ 限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保(指針第8条)。
  8. ⑧ 限度時間の適用除外・猶予の事業・業務についても、限度時間を勘案し、健康・福祉を確保するよう努める(指針第9条、附則第3項)。
健康福祉確保措置

 限度時間を超えて労働させる場合は、以下の健康福祉確保措置を1つ以上講じなければならない。
①医師による面接指導、②深夜業の回数制限、③終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)、④代償休日・特別な休暇の付与、⑤健康診断、⑥連続休暇の取得、
⑦心とからだの相談窓口の設置、⑧配置転換⑨産業医等による助言・指導や保健指導、⑩その他

※健康福祉確保措置の実施状況に関する記録は、36協定の有効期間と当該有効期間の満了後3年間保存。

割増賃金率

 限度時間を超えての時間外労働については、労使協定で法定25%を上回る率で割増賃金を支払うよう努めることとされている(指針第5条第3項)。
 なお、時間外労働が月60時間を超えた時間については、50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない(労基法第37条第1項)。
 したがって、労基法による規定は、時間外労働が月45時間までは、25%、45時間を超える部分については25%を上回る率で割増賃金を支払うよう努力義務がある。月 60時間を超えての時間外労働は50%の割増率となる。深夜労働(夜の10時から朝の5時まで)の場合は、前記の割増率に25%が加算される。

<中小企業(中小企業基本法)の範囲>
  資本金の額又は出資の総額 常時使用する労働者数
サービス業を主たる事業 5,000万円以下 100人以下
小売業を主たる事業 5,000 万円以下 50人以下
卸売業を主たる事業 1億円以下 100人以下
その他の事業 3億円以下 300人以下
※「常時使用する労働者数」の判断(通達)
  • 在籍出向者…出向元・出向先、両方の労働者数に参入
  • 移籍出向者(転籍者)…出向先の労働者数に参入
  • 派遣労働者…派遣元の労働者数に参入
罰則
  • 労基法第32条、第36条第6項違反は、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(労基法第119条)。
  • 安衛法第66条の8の2第1項違反は、50万円以下の罰金(安衛法第120条)。
<参照条文>

労基法第32条、第35条、第36条、第37条、第119条
安衛法第66条、第120条
労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第323号)労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について(平成30年12月28日基発1228第16号)

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